フォンクライスト卿の奇怪な叫び声.
いや、鳴き声というべきかが、城中に響き渡った頃、
毒女と化したアニシナは、
グウェンダルの焦りをよそに、
着々と準備を進めていた.
もう止めようがない、
そう思いながらも、これを止められるのは彼しかいない.
多くの男性集は、彼に最後の希望を託していた.
「本当にやるのか…?」
今までうるさく騒いでいたグウェンダルの声が、急に落ち着いた.
「…何故ですか?」
思ってもいなかったことを 聞き返され、
戸惑う彼を、小さな声で陰から応援する者がいたが、
逆に、毒女の側を応援 する者も少なからずいた.
「…掃除をしたことがあるか?」
そんなことですか、
と鼻で 笑ったアニシナは、
グウェンダルに近づき、思い切り見上げて言った.
「ありますよ」
これには、毒女側も驚いた.
「いいでしょう、聞かせてあげます」
フォンヴォルテール卿は何も言っていない.
言い訳より先に、アニシナの昔話が始まった.
「昔々ある城に〜」
そう、あれは、グウェンダルが幼い頃の話だ.
勿論アニシナも、そのころはまだ幼かった.
「掃除…とは何ですか?ははうえ」
膝をつき、視線が同じになった母親を見つめて、
少年、グウェンダルが首を傾げた.
「お部屋を綺麗にすることよ.今日はアニシナちゃんも手伝っ てくれるらしいわよ〜」
ツェリが言った直後、
ガチャ と、扉の開いた音が部屋中に響いた.
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