「それじゃあ、早速連絡してきます」


ユーリの質問に答えないまま、そう言って出て行こうとするコンラートに、村田が笑顔で声をかける。


「ウェラー卿…ボブに手配を頼む家の数は一戸建てを1つだけ、だからね。どこかの誰かと2人きりになろう、とか考えて…
  それ以外に家を頼んだりしたら駄目だよ♪」

「おい、村田…いくらコンラッドでも、そこまでは…」


しないだろ。と言葉を続けようとしたユーリは、チッという舌打ちの音を耳にし、苦笑を強張らせた。

ギギギ、とぎこちなく顔を音の聞こえた方向へ向けてみれば、そこには爽やかな笑みを浮かべて村田を見ているコンラートが立っているだけ。

…他には誰もいない。

先程の舌打ちはやはりコンラートがしたものらしいと悟り、ユーリはやや青ざめる。


「そんなことしませんよ、猊下」


コンラートは口元に笑みを張り付けたまま、村田に答えを返した。

だが、その目は笑っておらず、全く信憑性がない。

それを見て取った村田も口元に笑みを浮かべる。

笑いながらお互いの考えを探り合っている2人の間に流れる不穏な空気に、ユーリはダラダラと冷や汗を流す。

永遠かとも思える沈黙の後、ようやく村田が口を開いた。


「…そうかな?」

「当たり前ですよ。……では立ち話はこのくらいで、そろそろ行かないとまずいでしょうし」


有無を言わせずに話を切り上るコンラート。

これ以上村田と会話を続けていては、余計なことまで言われそうだと判断したようだ。

そしてコンラートは、今度こそボブという人物と連絡を取るために出て行った。

コンラートの姿が完全に見えなくなると、ユーリはその場に座り込み


「……こ、怖かった…」


と、呟く。

その額には汗が浮かんでいた。

そして図らずも、周りで見ていたグウェンダル達(除グレタ)も、ユーリと同意見なのだった。

皆顔が青ざめている…平然としているのは当の村田と、何も分かっていないグレタくらいだ。

ユーリは心底思った…


「(頼むから何も問題起こさないでくれよ―!!!)」


と。

もちろんそんな願いが…叶うわけはないと分かっていながら。








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