「わぁ〜、似合う似合う!」

「……」

「俺ってば最高!」

「金もってるのか」

「え」

もってないのか……。



ここは服屋。
まさかとは思ったがやはりお約束で、期待を裏切らずに奴はここにきた。
変装でもするらしい。

「俺は美人だからなんでも似合うぞ」

「あっそう」

自信がある王は素晴らしいが、ありすぎる王も問題だ。

「ほーらこの服なんかはどうだ?」

「それは婦人服だ」

「えっそうなの?あんまり似合うから気付かなかった」

殴ってもいいだろうか

「いっそのことさー」

「嫌だ!」

また妙なことを言い出す気だ。早いうちに断っておかなければ。

「女装でもしてみるか?」

あぁ、やっぱり。

「お前には男としてのプライドはないのかー!」

嫌だと言っているのに!

「ほれほれ、これは−?」

「アホか!」

こいつのおままごとには付き合ってられん!

とりあえず店を出よう。そしてやっぱり城に帰ろう。

「おい待てよ−。そこのお嬢さん、お待ちになって〜」

「誰がお嬢さんだ!」

こんな奴に構ってたら、いつまでたっても旅は進まない。

「はじめから乗り気ではなかったんだ私は…」

はぁ…

「なぁなぁ次はどこに行く?あの魚の一族のとこか?」

「知るか!私は帰る。」

「そんな…」

そんな残念そうな顔しても無駄。その手にはひっかからないぞ。

『アァ〜〜〜〜』

「な、何の声だ?!」

「は?声…?」

また私の気を引こうとしてる…

「お前聞こえないの?このなんか…透き通るような声…カウンターテナーの…!」

「おぉ、ついに…」

「なんだよ」

「私離れをして運命の女性に出会ったか」

「おまえっ馬鹿にしてるだろ!」

「してる。」

「大体カウンターテナーっつったら男だろうが!」

『ア〜アァァ〜〜』

「あー!また聞こえたっ!ほらこっちこっち!」

「なっおい引っ張るな!」

なんだかんだ言って、いつもまきこまれるんだ、私は…!






 


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