みつめる先に僕がいないなら

せめて体だけでも

愛して欲しいと思った…







『一瞬を求めて』








「また見てるの?」

中庭で楽しそうにじゃれ合う渋谷とビーレフェルト卿を見ている彼に
そっと声をかけた。
その視線があまりにも優しいから、僕は少し苛ついてしまったんだ。

僕は知っている。
何故苛つくのかを。


好きだからだ。


彼を、コンラートを好きだからだ。



彼は視線を外し、ゆっくりとこちらを向いた。
その時にはもう、あの優しさは瞳の奥に隠されて見えなかった。

「何かご用ですか?猊下」

親しみを込めた声ではあるが、優しさなんかはこもっていない。
そう思うと、無性にイライラして、自暴自棄な気持ちになる。

困らせてみたい…と思った。
「僕」のことで彼を困らせてみたい…と。



「ご用はないよ。ご用がなくちゃ君に話しかけてはいけないの?」

含みを持った言い方にも、彼は綺麗な笑顔で答えてくる。

「いいえ。そんなことないですよ」

僕たちはいつもこうだ。
会って話をしても、いつも笑顔の下で探り合う会話しかできない。
自分にも原因があることはわかってるんだけどね。


「ねぇ、コンラート」

「何でしょうか猊下?」

「君さ、そうやってずっと隠し続けているつもりなの?」


僕の言葉に、彼の眉が少し動いたのに気付いた。
ふふ…なんか楽しい。


「何のことですか?」

動揺はすぐに笑顔で隠してしまう。
彼はいつもそうだ。


「何のこと?自分が一番わかってるくせに」

僕は笑顔でそういうと、首を渋谷達のいる方へと向けた。
彼も同じように首を向ける。


「好きなんだろ?彼のこと」

「…」

「とられて悔しい?嫉妬しちゃう?」


笑みを含んだ声は、きっと彼を苛つかせているだろう。
でも、僕に興味をもたせるには、こうするしかないって思うから、僕は
僕の作戦に従うんだ。


「…猊下、私を脅してますか?」

少しの間をおいて、彼はそう言った。

「脅す?あぁ、僕が彼らに君がそう思ってるって言っちゃうかもってこと?」

「えぇ」

「まぁ…そう言ったら、彼らは壊れてしまうだろうねぇ〜」

コンラートがこちらに顔を向けたのがわかった。

彼は優しい。
だから、あのふたりの幸せを壊すことなんてできないだろう。

その弱みにつけ込む僕はなんて汚いんだろう。
でも、彼に僕を見てもらえるなら、あえて僕は汚い手を使うよ。


「猊下」

「何?」

「…お望みは何ですか?」

「さぁね…。着いてくればわかるんじゃない?」



僕はそう言い残し、その場を後にした。
行き着く先は…僕の部屋だ。
彼は着いてくるだろうか?

不安に思い耳を澄ますと、後ろから彼の靴音が聞こえた。


扉を開け、するりと体を中に入れた。
入る途中ちらりと彼を見ると、眉間に深い皺を寄せていた。
執務室にこもっている長兄に、少し似ているなと思った。



コンラッドが扉を開け、中に入ってきた。
僕は静かに、ベッドに腰掛けた。



「猊下…」

「わからない?口で言わないといけない?」


コンラートはゆっくりと僕に近づき、乱暴に僕の服を乱した。

これを望んでいたとはいえ、少し悲しかった。
でも、愛してもらえないのなら、体だけでも欲しいと望んだのは僕だ。
泣くわけにはいかなかった。





…………?



服を乱したものの、彼はそれから動こうとしなかった。
不審に思い、声をかけようとした瞬間、ふわりと温かい手で頬をはさまれた。
視線が絡み合う。

そして彼は、ふと、あの優しい瞳をして言ったのだ。



「悲しいことしないで下さい」

「え?」


優しい声音で発せられた言葉に、僕は耳を疑った。


「あなたが優しい方なのは知っています。いつも…見ていますから」


彼はそう言うと、僕の額にゆっくりと唇を寄せた。
小さな口づけは、夢か現実かわからないほど短いものだった。
彼はすぐに唇を離すと、何も言わず扉の方へ向かっていった。

「あ!待っ…!」

予想外のことに動揺しながら、僕は必死で彼を呼び止めた。


言葉の意味を教えて欲しい。
僕は…期待しても良いのだろうか…?
期待と不安が入り交じる胸を押さえ、彼の背中を見つめた。


彼は足を止め、首だけをこちらに向けた。
瞳は優しい。




「私の言葉、忘れないで下さね」


それだけを言って、彼は部屋を出て行った。


僕は一気に体の力が抜けるのを感じた。
目の前が真っ白になったようだ。









fin.




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チャットの間にいただいたものをずうずうしく頂いちゃいました。
(代わりに変なもの押し付けてきましたが。)

ムラコン…(ブラコンみたい) 村田さん誘い受けだー!!
脅してるよ!?しっかし皆さんのコンラートさんはなぜにこんなかっこいいのか・・・。
なんと言うか・・・男らしい?
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